為政第二 029

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原文                 作成日 2003年(平成15年)5月から7月
子貢問君子。子曰、先行、其言而後之。
  
〔 読み下し 〕
()(こう)君子(くんし)()う。()(のたま)わく、()(おこな)う、()(ことば)(しか)(のち)(これ)(したが)う。
 
〔 通釈 〕
子貢が君子とはどういう人物を云うのかを問うた。孔子は、「実行が先!言葉は後!これが君子というものだ」と答えた。
 
〔 解説 〕
子貢は言語の人と云われるだけあって、猛烈に頭が切れて弁が立つ人物だったようです。論語のあちこちで、弁舌爽やかな所を披露してくれておりますが、「口は禍の元」でもありますから、孔子も気掛かりだったのでしょう、「行ないが先、口は後!」と、ピシッと言い聞かせております。

前にも述べましたが、同じ質問に対して、孔子は、弟子達の機根や性分に合わせて百人百様に語っておりまして、決してワンパターンではありません。時には、人によって正反対の答え方をしている場合もあります。こういう師を持った弟子達は幸せだったでしょうね、「先生は自分のことをちゃんと見てくれている」と、常に実感出来た訳ですから。孔子が弟子達から、親のように慕われていた理由が分かるような気がします。

いつの時代も、ワンパターンで等閑(なおざり)の親はいくらでも居りますからね。ワンパターン(御座成・おざなり)でマンネリズム(
等閑 ・なおざり)のことを、「馬鹿の一つ覚え」と云いますが、馬鹿の一つ覚えで通用する程人も世の中も甘くはないんですね。諸行無常・変化常道ですからね、この世は。
 
〔 一言メッセージ 〕

『ワンパターンとマンネリズムは、人を腐らせ己を腐らせる。
  
日に新たに、日々に新たに、亦日に新たなり』
 

〔 子供論語  意訳 〕
弟子(でし)()(こう)が、リーダーの心構(こころがま)えを質問(しつもん)した。孔子(こうし)(さま)は、「まず自分(じぶん)から模範(もはん)(しめ)しなさい。そのあとで(くち)説明(せつめい)しなさい」と(こた)えた。
 
〔 親御さんへ 〕

山本五十六(いそろく)の言葉に、「してみせて、云って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は育たじ」というものがありますが、孔子の「先ず行なう、其の言(ことば)は而る後に之に従う」を、五十六さんなりに言い替えたのかも知れません。これは今でも オンザ ジョブ トレーニング(実地訓練)の鉄則です。

  一、まず模範を示す。
  二、ポイントや要領を説明する。
  三、やらせてみる
  四、少しでもうまくやったら褒めてやる。


特に四番目の褒めてやるというのが肝腎ですね。初心者は失敗するのが当たり前ですし、自分では、うまく行っているのかどうかも判断できませんから、百点満点中60点取れたら「ヨーシ、いいぞ!」と褒めてやると、その気になるんですね。

人を育てる場合には、「二割増六掛の法則」というものがありまして、目標を与える際には
常に実力のニ割増しの目標を設定してチャレンジさせる。目標の六掛け(60%)達成したら良しとする。

こうしますと、100%×1.2×0.6=72になりますから、72−60=12ポイント実力がついた勘定になるでしょう。このように育ててやると、地力がついて確実に伸びて行くんです。ワンパターンやマンネリズムではダメだと、本人自身気がついて、自ら目標を設定できるようになるんですね。

百点満点でなければダメ!最低でも90点は取って来い!とやるから、つぶれてしますんですよ、普通の子は。学業のみならず、スポーツでも仕事でも、「ニ割増六掛の法則」で育ててやれば、皆そこそこの成績は残せるものなんですね。
 

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