泰伯第八 208

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原文          作成日 2004年(平成16年)11月から2005年(平成17年)2月
子曰、禹吾無間然矣。菲飮食、而致孝乎鬼神、惡衣服、而致美乎黻冕、
卑宮室、而盡力乎溝洫。
禹吾無間然矣。
 
〔 読み下し 〕
()(のたま)わく、()(われ)間然(かんぜん)すること()し。飲食(いんしょく)(うす)くして(こう)鬼神(きしん)(いた)し、衣服(いふく)()しくして()黻冕(ふつべん)(いた)宮室(きゅうしつ)(いや)しくして(ちから)溝洫(こうきょく)(つく)す。()(われ)間然(かんぜん)すること()し。
 
〔 通釈 〕
孔子云う、「夏の禹王には文句のつけようがない。自分の食事は切り詰めて、祖先の祭を立派にした。日頃の衣服は粗末なものをまとい、礼服を立派にした。宮室は質素にして、灌漑工事には労力・費用を惜しまなかった。禹のこのような生き方には、文句のつけようがない」と。
 
〔 解説 〕

禹 舜の禅譲を受けて夏王朝を興す。中国では「黄河を治むる者は天下を治む」と云う諺があるそうですが、禹は悪戦苦闘の末、初めて黄河の治水に成功した人物です。禹の発明した治水工法は、二重堤防方式だったようで、現在でもこの工法が広く使われておりますから、孔子が「吾間然すること無し!」というのもうなずける気がします。四千年間も通用する技術など、そう滅多にあるものではありませんからね。
 

〔 子供論語  意訳 〕
孔子(こうし)(さま)がおっしゃった、「()(くに)建国(けんこく)した()(おう)には、文句(もんく)のつけようがない。自分(じぶん)食事(しょくじ)衣服(いふく)()まいは質素(しっそ)にして、それで()いた予算(よさん)で、お(まつ)りを(さか)んにし、制服(せいふく)立派(りっぱ)にし、治水(ちすい)工事(こうじ)(かわ)氾濫(はんらん)(しず)めて(おお)くの人々(ひとびと)(すく)った。自分(じぶん)のことは後回(あとまわ)しにして国民(こくみん)最優先(さいゆうせん)(てっ)した()(おう)には、文句(もんく)のつけようがないね」と。
 
〔 親御さんへ 〕

世界で最初に清酒を飲んだ人は禹だそうです。(それ迄は酢と酒の中間の濁酒(どぶろく))その時の様子を十八史略では次のように伝えています。「儀狄(ぎてき)という男が初めて清酒を作り禹王に献上した。禹は飲んでみて余りの旨さに驚き、『後世必ず酒を以て国を亡ぼす者あらん』と云って、以後儀狄を遠ざけた」とありますが、禹が予言した通り、禹王の末孫桀王は「酒池肉林」で国を亡ぼし、湯王の末孫紂王も又「酒池肉林」をやらかして国を亡ぼしている。確かに酒は「天の美禄百薬の長」でありますが、「気違い水」ともなりますから、程々にしておかないといけませんなあ。何とも耳が痛いね!
 

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