子路第十三 319

上へ

〔原文〕
子曰、魯衛之政、兄弟也。

〔読み下し〕
()(のたま)わく、()(えい)(まつりごと)は、兄弟(きょうだい)なり。

〔通釈〕
孔子云う、「魯国の祖は周公旦であり、衛国の祖は周公の弟康叔(こうしゅく)で、ともに文王の血を引く兄弟同志の国であるが、今我が魯では君臣の義が失われ(三桓の専横)、衛は父子の親が失われてしまった(父カイカイとその子、輒(ちょう)の君位をめぐる骨肉の争い)。兄も兄なら弟も弟で、似たりよったりだなあ!」と。

〔解説〕
直訳しただけでは何のことかさっぱり分かりませんので、かなり言葉を補って通釈してみました。恐らく孔子はこんなことを云いたかったのではないかと思います。

骨肉の争いを民族規模に拡大したのが、ユダヤとアラブの争いでしょうか? ユダヤ民族もアラブ民族も、その父祖はアブラハム(セム族)で、アブラハムの妻サライは子供ができなかった為、その侍女であるエジプト人のハガルを差し出して子を生ませた。その子がイシュマエル(石丸)と云ってアラブ民族の祖となる。その後妻サライにも子供が生まれた。(この時アブラハム百才、サライ97才)その子がイサク(伊作)と云って、ユダヤ民族の祖となる。つまり、アラブ(石丸さんの子孫)とユダヤ(伊作さんの子孫)は、ともにセム系の血を引く腹違いの兄弟である。

更に、ユダヤ教の神ヤハウエとイスラム教の神アラーは同じ神・同一神である。(キリスト教の神エホバも同じ神で呼び名が違うだけ)ともにアブラハムの血を引くセム系の兄弟民族で、尚且つ同じ神をいただく兄弟宗教の民が、どうしてこうもいがみ合わなければならんのだろうか?

宗教戦争の経験のない日本人にとっては、誠に理解に苦しむ所ですが、それと云うのも、この国を統()べたもう主神(すしん)・天照大神が慈愛と包容力あふれる女神であることと関係があるのかも知れません。私達は普段気にも止めていないけれども、日本人は天照大神に感謝しなければなりませんな!宗教とは相剋排他するものではなく、相生和合するものであると、DNAに刻印してもらったようなものですから。だから、儒教が入り、仏教が入り、キリスト教が入って来ても、当然の如く相生和合→統一止揚してしまうんですね、日本人は。


〔意訳〕
孔子(こうし)(さま)がおっしゃった、「()(こく)政治(せいじ)失望(しつぼう)して(えい)(こく)()てみたが、この(くに)(みだ)具合(ぐあい)()(こく)とどっこいどっこいで、がっかりだなあ」と。


〔親御さんへ〕
解説でユダヤの話しが出たついでに、もう少しユダヤ人について考えてみましょう。キリスト教がヨーロッパの白人社会で広まった為、教会の壁画に画かれるイエスキリストや聖母マリアの像は、みな青い目・金髪・白い膚の白人として画かれておりますから、皆さんは、イエス様は白人?と勘違いしているのではないでしょうか?残念ながらこれは間違いでありまして、イエスキリストはセム系の血を引くれっきとしたユダヤ人です。ですから、イエス様はダークアイ・ダークヘア・褐色の膚を持ったアジア人、アラブ人とほぼ同じ風貌をした方でした。

キリスト教はユダヤ民族の間には広まらず、ユダヤ人はユダヤ教を頑なに信じていた為、自ら神の証しをするイエスを十字架にかけてしまった。ユダヤ教の民(旧約の民)は異教徒との婚姻を禁じられておりますから、白人のキリスト教徒と交わることがありません。従って、白人との混血もありません。

ですから、普通ユダヤ人と云えば、本当はダークアイ・ダークヘア・褐色の膚の筈ですが、現在世界のユダヤ人の90%(2000万人中1800万人)を白人が占めている。これは一体どういうことでしょうか?(ここが分かればあなたもちょっとしたユダヤ通)実はこれにはちょっとした歴史のいたずらがあるんですね。

黒海からカスピ海に至る一帯、今のグルジアとアゼルバイジャン一帯には、その昔(7世紀頃)ハザール帝国があり、ここに住む人々はトルコ系の白人(コーカソイド)でありました。ハザール人は特定の宗教を持っておりませんでしたが、8世紀になるとキリスト教を国教とする東ローマ帝国と、イスラム教を国教とするサラセン帝国が、ハザール帝国を挟んで政治的に対立するようになった。

東ローマ帝国とサラセン帝国は次第にハザールの内政に干渉するようになり、どちらに改宗しても国全体が戦火に巻き込まれるのは必至と判断した国王カガン・ブランは、双方のルーツであるユダヤ教に改宗すれば、両国からの侵略を避けられるのではないかと考え、9世紀、国家丸ごとユダヤ教に改宗し、自分達を「ユダヤ人」と名乗ることにした。ここにセム系ではない白人のユダヤ人国家が突如誕生することになった訳です。

国王カガン・ブランの妙案は功を奏し、ハザール帝国はしばらく命脈を保つこととなるが、12世紀、新たに台頭して来たモンゴル帝国に滅ぼされ、大量の難民が西へ西へと移動して、東ヨーロッパ地方に住みついた。このハザール系ユダヤ人(白人)が、後に「アシュケナジー・ユダヤ」と呼ばれるようになった人々であります。

これに対して、アブラハムの血を引くセム系ユダヤ人を、「スファラディー・ユダヤ」と云います。1948年、パレスチナに「イスラエル共和国」を建国したのがアシュケナジー・ユダヤなんですね。それでアラブは怒っている訳です、セム族(兄弟民族)と関係ない民族が入って来たから。

つまり、現在ユダヤ人には二種類の民族があるということです。一は、アブラハムの血を引く、イエスを礫にしたセム系ユダヤ人の子孫「スファラディ一・ユダヤ」と、二は、9世紀ユダヤ教に改宗し、イエスの磔とは関係のないハザール系ユダヤ人の子孫「アシュケナジー・ユダヤ」。

アシュケナジーは、ユダヤ人を名乗ったが為にイエスを礫にした民とされて、移住したヨーロッパキリスト教国で、謂われのない迫害を受けることとなった.(ユダヤ人を名乗らず、ユダヤ教ハザール人としておけば、迫害されることがなかったかも知れない)

しかし、アシュケナジーは屈することがありませんでした。欧米のユダヤ系大富豪やノーベル賞の20%を獲得しているユダヤ人は皆アシュケナジー。ナチスのユダヤ人迫害から逃れる為に、リトアニアで杉原千畝の手書きのビザを受け取った人達はアシュケナジー。種子島に鉄砲を伝えたフェルナン・メンデス・ピントはアシュケナジー。明治初期、シェル石油を創業した横浜在住のマーカス・サミュエルもアシュケナジー。日露戦争の戦費を工面してくれたヤコブ・ヘンリー・シフもアシュケナジー。明治憲法の起草を手伝い、「明治憲法の父」と呼ばれたアルベルト・モッセもアシュケナジー。

更には、「イスラエル建国の志士」と呼ばれるヨセフ・トランペドールは、日露戦争で捕虜となって大阪浜寺の収容所に入れられていた間に、日本の武士道精神に触れ、釈放後「サムライ精神」をイスラエル建国の柱に据えた。このトランペドールもアシュケナジー。

近年、不可解な出来事をすべて「ユダヤの陰謀」の一言で片付けてしまおうとする軽率な風潮が見受けられますが、アシュケナジー・ユダヤはむしろダシに使われているのではないでしょうか?どんな民族にだって、善人も居れば悪党も居るものです。これはユダヤ人も日本人も欧米人もアラブ人も同じ。

アシュケナジー・ユダヤと日本人は縁も深く、ものの考え方や価値観が似ているように思います。「宗教的頑固さ」を除いて。未だに世界中でユダヤ人に対する偏見が残っていると云われる中で、唯一ユダヤ人に対して全く偏見を持たない日本人までもが、無知や誤解から、謂われのない偏見を持ってはいけませんな!どの国にだって善人も居れば悪党も居るのだから。
 

子路第十三 318 子路第十三 319 子路第十三 320
新論語トップへ