微子第十八 475

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〔原文〕
楚狂接輿、歌而過孔子日、鳳兮鳳兮、何徳之衰。往者不可諫、来者猶可追。
已而已而。今之従政者殆而。孔子下欲與之言。趨而辟之、不得與之言。

〔読み下し〕
()(きょう)(せつ)輿()(うた)いて孔子(こうし)()ぎて()わく、(ほう)(ほう)や、(なん)(とく)(おと)えたる。()(もの)(いさ)むべからず、(きた)たる(もの)(なお)()うべし、()みなん()みなん。(いま)(まつりごと)(したが)(もの)(あや)うし。孔子下(こうしお)りて(これ)()わんと(ほっ)す。(はし)りて(これ)()け、(これ)()うことを()ず。

〔新論語 通釈〕
楚の変人接輿が、歌を歌いながら孔子の宿舎を通りかかった。歌の内容は、「鳳(おおとり)よ鳳よ(孔子に喩えて)、お前は聖王が世に出る時に来て舞う霊鳥だと聞くが、よりにもよってこんな乱世に出るなんて、何と徳の衰えたことよ。過ぎてしまったことは諫めても取り返しがつかないが、将来のことならまだ間に合う。よしなさいよしなさい、このご時世に政治に関わることは。身を危うくする元だよ」というものであった。孔子はこれを聞くと急いで表に出て接輿と話したいと思ったが、接輿が小走りで立ち去ってしまったので、話しをすることが出来なかった。

〔解説〕
接輿は隠者であったとされますが、はっきりしたことは分かりません。この当時、隠者・逸民は結構いたようで、以下何人かの隠者が登場して孔子を批判しますが、之に対する孔子の言葉が又味があります。

〔子供論語 意訳〕
()(くに)()わり(もの)(せつ)輿()という(ひと)が、孔子(こうし)(さま)(いえ)(まえ)で「鳳凰(ほうおう)孔子(こうし)(さま)にたとえた)時代(じだい)()(ちが)えて()いおりた。よりにもよってこんなに(みだ)れた時代(じだい)に。政治家(せいじか)になって世直(よなお)ししようなどおやめなさい。(いのち)()とすよ」と即興(そっきょう)(うた)(うた)った。これを()いた孔子(こうし)(さま)(せつ)輿()(はな)したいと(おも)って(いそ)いで(おもて)()たが、(せつ)輿()()(ばし)りで()()ったので(はな)しをすることができなかった。

〔親御さんへ〕
鳳凰は小学国語辞典には載っておりません。伝説の霊鳥で鳳は雄、凰は雌。聖王が誕生する時に現れて舞うめでたい鳥とされていました。首は蛇、尾は魚、顎(あご)は燕、嘴(くちばし)は鶏、背は亀に似て、五色の模様の羽根を持つとされますが、訳が分かりませんので、お子さんにはフェニックス(不死鳥)に似た鳥、と教えてあげてください。自ら焼け死んで甦る聖なる鳥とされ、イエスキリスト復活の象徴とされた。鳳凰もフェニックスも、救世主の象徴ですね。
 

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