〔
原文
〕
|
齊景公問政於孔子。孔子對曰、君君、臣臣、父父、子子。公曰、善哉。
信如君不君、臣不臣、父不父、子不子、雖有粟、吾得而食諸。
|
〔 読み下し 〕 |
斉の景公、政を孔子に問う。孔子対えて日わく、君君たり、臣臣たり、父父たり、子子たり。公日く、善い哉。信に如し君君たらず、臣臣たらず、父父たらず、子子たらずんば、粟有りと雖も、吾得て諸を食わんや。
|
〔 通釈 〕 |
斉の景公が政治の要道を孔子に問うた。孔子は、「君主は君主らしく、臣下は臣下らしく、父は父らしく、子は子らしく、名分を正すのが政治の要道です」と答えた。景公は、「これは良いことを聞いた。おっしゃる通り、君主が君主らしくなく、臣下が臣下らしくなく、父が父らしくなく、子が子らしくなかったら、社会秩序が崩壊して、たとえ庫に米があったとしても、安心して食事もとれなくなるに違いない」と云った。
|
〔 解説 〕 |
これは孔子35才頃の会話と思われます。名分とは、地位や立場に応じた本分(果すべき役割や使命)のことでありまして、ここが崩れるとまず家庭が崩壊し→次に学校が崩壊し→更に社会が崩壊し→遂には国家まで崩壊してしまいます。
親は親らしく、子は子らしく、教師は教師らしく、生徒は生徒らしく、社長は社長らしく社員は社員らしく、政治家は政治家らしく、役人は役人らしく、総理大臣は総理大臣らしく、国会議員は国会議員らしく、日本国は日本国らしく、日本人は日本人らしく。
「らしくあれ!」などと云うと、外見だけそれらしくあれば良いと勘違いしてしまいそうですが、外見も大事だけれど、それよりも中身、つまり本分に相応しいだけの精神の有る無しの方が先です。「らしくあれ!」とは、「本分に相応しい人物たれ!」ということなんですね。
精進・忍耐・勇気・敢闘・高潔等々、元来人間の美徳とされて来たものごとを鼻であしらい、欲の赴くまま安直な損得原理主義に振り回されて、平然としている大人を最近よく見掛けますが、家では子供にどんな教育をしているのでしょうか?「愚直に生きろ!」と云う代りに、「儲かりさえすればいいのだから、要領よく生きろ!ずる賢く生きろ!」と身を以て教えているようなものでしょう?これは。
ところがどういう訳か、こういう人に限って教師がなってない!学校教育の崩壊だ!社会環境が悪い!などと、人のせい社会のせいにしたがるんですね。なってないのは親、崩壊しているのは家庭教育、悪いのは家庭環境であることを棚に上げて。家庭教育も家庭環境も、どのように施しどのように整えるかは親の責任であって、子の責任ではない。勿論他人の責任でも社会の責任でもない。
なってないのは親じゃないんですか?親の精神が崩壊しているのではないですか!?システムや制度が崩壊するのは、必ずその前に精神の崩壊がある。ここを間違ってはいけません。精神が崩れていたら、システムや制度をどんなにいじってもダメなんです。
ですから親は子に、大人は子供に、上手に生きる前に立派に生きよ!要領良く生きる前に愚直に生きよ!と身を以て教えなければならんのです。上手に要領良く生きるだけなら、猿だってちゃんと子に教えているではないですか、大津で暴れ回っている日吉神社の猿のように。日吉神社の猿は神の使いだそうですから、神様は猿を使って人間に気付かせようとしているんじゃないのかな?サル化するな!退化するな!!と。人間は裸の猿ではないんです、ケータイを持った猿ではないんです。
|
〔 子供論語 意訳 〕 |
斉国の殿様景公が「国を治めるポイントを教えて下さい」と云った。孔子様は、「国に於いては政治家は政治家らしく、役人は役人らしく、家に於いては親は親らしく、子は子らしく本分をつくすように指導することが政治のポイントです」と答えた。景公は、「これはいいことを教えていただきました。政治家や役人が国や国民の為よりも自分の為を優先し、親や子供が家庭や家族の為よりも自分の為を優先したら、国も家庭もムチャクチャになってしまいますね」と云った。
|
〔 親御さんへ 〕 |
私が子供の頃は、勉強しないで遊んでばかりいると「小学生の本分を全うしろ!」と親によく云われたものですが、小学校低学年では本分の意味が分かりませんから、「本分って何だ?」と口答えすると、「小学生の本分はよく学びよく遊ぶ!もうよく遊んだから、今からよく学ぶ!!」と叱られたものです。
「地位や立場に応じた役割や使命が本分だ!」などと云われたところで、子供には何のことやら分かりませんから、「良く学び良く遊ぶ!」とストレートに云われて妙に納得した覚えがあります。今の親御さんは自分の子供に「本分を全うしろ!」とは云わんようですが、これは云った方がいいですよ。
子供に云えるような立派な人間ではないから・・・、などと自己卑下する必要はない。自分が大したものでないからこそ、子供には立派になってもらいたいではないですか!これには奥さんの協力が欠かせません。「パパのような立派な人間になりなさい!本分を全うしなさい!!」と毎日毎日云い続ければ、子供のみならずグウタラ亭主もそうそうバカはやっていられなくなります。子供が「ボクも本分を全うして、パパのような立派な人間になるんだ!!」と父親の前で云うようになったらしめたも
の。
女房のみならず子供からもこう云われたら、どんなバカ亭主だって少しはまともになりますよ、立派とまでは行かなくとも。「パパみたいになったらいけません!」などと本当の事を云うから、男はやる気をなくしてしまうんだね。本当のことを云って亭主も子供もダメにした方が良いか?嘘をついてでも亭主も子供も立派にした方が良いか?となれば、答えは決まっているでしょう。
最近は男がどんどん劣化して来ていますから、ここは一つ嘘も方便、ダメ男を奮起させるのが女の本分!と腹を括って、世の男どもを奮い起たせて下さい。「論語でも学んでみようか!?」と亭主が云うようになったら大成功!気が変らないうちに懇親会費5000円を持たせて当会に寄越して下さい。あとは私が引き受けます!!
現代日本に求められる理想の人間像は、信長でも秀吉でも家康でもなくて、山内一豊の妻「千代」なのではないでしょうか。男がやる気を起こすのもやる気をなくすのも、本当のところは女次第なんですね、釈迦や孔子やイエスのような大聖人は別として、我々凡人は。
家庭の命運、否、日本の命運・世界の命運は、女の双肩にかかっていると云っても過言ではないでしょう。男に任せておくから、いつまで経っても戦争ばかりやらかすんです、屁理屈を捏ね回して。男は本能的に戦争好きですからね。孔子も季氏第十六(253頁)で云っているではないですか、「其の壯(さかん)なるに及んで血気まさに剛なり。之を戒むること闘いにあり」と。
|